獣の奏者エリン – 大人が読んでもハマる小説、「21世紀のハイジ」を目指したアニメ

erin 著者のこと

NHKアニメワールド:獣の奏者エリン

島根の司法書士、坂根(@sakane0958)です。
私のお気に入り、アニメ化もされた小説のご紹介。
著者の上橋菜穂子さんは近年受賞続きなので、名前を見たことがある方も多いかもしれません。

小説「獣の奏者」

概要

ジャンルとしてはファンタジーです。

「リョザ神王国」と呼ばれる異世界の地を舞台とするファンタジー巨編。運命に翻弄される少女・エリンを軸に人と獣の関わりを描く。(Wikipediaより)

架空の生物等々たくさん出てくるので、もう少し詳しいあらすじを書こうとするとなかなか難しさを覚えるのですが、私なりのあらすじを書いてみます。

物語の中で重要な役割を果たす獣が二種類出てきます。
「闘蛇」という戦争の道具として人間に使われる巨大なトカゲ。
「王獣」という人に決して慣れないと言われる、闘蛇の天敵の獣。
王獣は、狼の頭と後ろ足に鷲の羽根をつけたような外観です。

主人公のエリンは闘蛇の獣医をしている母親との二人暮らし。
母親が管理していた闘蛇を死なせてしまった罪を着せられ残酷な刑に処せられて、天涯孤独の身に。
成長して王獣に触れる中、人に慣れないと言われていた王獣と心を通わせるようになります。
王獣一頭で闘蛇の軍勢を壊滅させるだけの力があることが為政者達の知るところとなり、エリンは戦争の駒として利用されそうになります。
そんな中、エリンは獣と人との関わり方を自分なりに考え続け、あくまでも自分の信念を貫き通して生きていきます。

かなり端折っていますが、そんな話。

獣の奏者の魅力

”自然や生き物に対する優しさと深い尊敬の念に満ちている”

作者の上橋菜穂子さんは「児童文学のノーベル賞」と呼ばれる国際アンデルセン賞を2014年3月に受賞されていますが、「自然や生き物に対する優しさと深い尊敬の念に満ちている」というのは、その賞の選考理由の中の言葉。

国際アンデルセン賞に上橋菜穂子さん | NHK「かぶん」ブログ:NHK
国際児童図書評議会は今回、世界中からノミネートされた28人の作家の中から上橋さんを選んだ理由について、「さまざまなファンタジーの世界を築き上げるたぐいまれな才能があると同時に、その作品は自然や生き物に …
”国際児童図書評議会は今回、世界中からノミネートされた28人の作家の中から上橋さんを選んだ理由について、「さまざまなファンタジーの世界を築き上げるたぐいまれな才能があると同時に、その作品は自然や生き物に対する優しさと深い尊敬の念に満ちている」としています。”

国際アンデルセン賞は作家に対して与えられる賞なので、作品としての「獣の奏者」に対する直接の評価ではありませんが、獣の奏者も「自然や生き物に対する優しさと深い尊敬の念に満ちている」作品です。

エリンの見せる知的好奇心

エリンが何かに興味を持ったとき、寝食を忘れてのめり込む様子が幾度となく描かれます。
エリンが特に強い興味を示すのは、生き物の生態なのですが、中でも闘蛇や王獣を飼育する際に定められた掟と、それによる生態の変化。

闘蛇や王獣を人間が制御できるように、特慈水という薬を飲ませたり、音無し笛という特定の高周波を発する笛で言うことをきかせたりしますが、それが生き物のあるがままの生態を歪めていることにエリンはしばしば葛藤します。

エリンのきっぱりとした人生観

自分の進む道は間違っているのかもしれない、という恐れをどこかに抱きながらも、最後には自分の信じる道をきっぱりと進むエリンの選択。
自分も「例え遠回りになるとしても、自分がその時に正しいと信じた選択をしたい」と常々思っているので、エリンの人生観にはとても共感するものがあります。

原作の小説全5冊の内容

原作はKindle版も出ています。
読み始めたら止まらない魅力のある小説。
ボリュームがあるので、私は一晩で読むようなことはできませんでしたが、それでも数日の間に一気に読みました。

獣の奏者 1闘蛇編

幼いエリンと母ソヨンとの闘蛇村での生活、ソヨンとの別れ、養父ジョウンとの出会い、カザルム学舎での王獣との出会い、あたりが入っています。

獣の奏者 2王獣編

エリンは王獣の幼獣リランとの絆を深め、王獣を操ることができる唯一の人間として戦争の駒にされそうになりますが、最後は自らの信じる選択を貫き通します。

ここまでが、アニメで描かれているストーリー。
風の谷のナウシカでも、アニメ化されたのは原作の一部で、原作にはアニメの先がありましたが、それを思い出させます。

ちなみに当初はここまでで獣の奏者は完成した作品だったそうです。
アニメ化、それに対する反響がきっかけとなって、以下の続編が書かれたとのこと。

上橋にとって物語の結末は『王獣編』のラストシーンが究極のものであり、これ以上物語が続くことはないと考えていたため、本来はこの全2巻で完結したはずだった。しかし、周囲から「続きを読みたい」という声が数多く寄せられ、またアニメ化されたこともあって、自身も物語の中で描ききれなかった謎への決着を付けたいという思いが生まれたために[1]、2009年8月に続編となる『探求編』と『完結編』が、2010年9月には『獣の奏者 外伝 刹那』が刊行された。(Wikipediaより )

獣の奏者 3探求編

2巻で描かれた大戦の後、エリンの獣ノ医術師としての生活や、ネタバレになるので詳しく書きませんが、2巻まででほんのり張られていた伏線のその後が描かれています。
そして、明かされないまま完結していたいくつかの謎も、少しずつ明かされていきます。

獣の奏者 4完結編

王獣の生態、掟に秘められた謎を解き明かしていったエリンは再び戦争の駒として争いの中に巻き込まれていきます。
神話に込められた戒め、王獣や闘蛇を飼育する際に守らねばならなかった掟は、いったい何を防ごうとしていたのか、一番大きな謎が明らかになります。
まさに完結編。

獣の奏者 外伝 刹那

母ソヨンと赤子のエリンのエピソード 、エリンの第一子出産と回想、エサル師の若い頃のエピソード、エリンの子育てへの葛藤、そんな短編4つが入っています。
ちゃんと本編と整合性のある外伝で、本編が楽しめた方はきっと読んで損は無いでしょう。

コミック

私は未チェックですが、コミックもあるようです。
「小説を読む習慣が無い」「アニメを通して観る時間が無い」という方はコミックから入るのもアリかもしれません。

アニメ「獣の奏者 エリン」

NHKで放映

NHKアニメワールド:獣の奏者エリン

アニメは一昔前にNHKで放送されました。
私は当時、司法書士試験の受験生だった頃なのに、わざわざ録画してみてたのを覚えています。

記者会見で、原作者の上橋菜穂子さんは「21世紀のハイジ」を目指す、とおっしゃったそうですが、ぜひ多くの子供達に見て欲しいアニメです。

NHKの力の入れっぷりがすごい

全50話の大作

私が見ていた時は、毎週土曜日に放映されていました。
週に一度放映するとして、365/7=52ですから、50話を週イチで放送すると、約一年かかる計算。
大河ドラマ並み?

NHKアニメワールド:獣の奏者エリン
これまでのストーリー 全50話

DVDボックスの時間で計算すると1223分。約20時間ちょいの大作です。

50話もあると、途中から見始めた人はストーリーについていけないので、総集編も作られたようです。

NHKアニメワールド:獣の奏者エリン
これまでのストーリー 総集編

主題歌をスキマスイッチが歌ってる

NHKアニメワールド:獣の奏者エリン
オープニングテーマ 「雫」(しずく) 歌 スキマスイッチ

主題歌をスキマスイッチが歌っています。
大物持ってきたな、という印象。

個人的な感想になりますが、スキマスイッチの歌うオープニングテーマは良い曲だと思います。
獣の奏者の世界観によく合っていると感じます。
ちなみに、第31回以降のストーリー後半はスキマスイッチ版でなく元ちとせが歌うバージョンになります。

編集後記

2015年4月7日、ニュースを見ていたら「今年(2015年)の本屋大賞が上橋菜穂子さんの「鹿の王」に決まった」と流れていて、途中まで書いていたこの記事を仕上げることにしました。
仕上げると決めてから、またしばらくかかってしまいましたが。

速報! 本屋大賞受賞、上橋菜穂子さんに聞く『鹿の王』創作秘話|マナトピ – 学びのトピック、盛りだくさん。
”人気シリーズ『精霊の守り人』『獣の奏者』で、幅広い世代の読者を夢中にさせてきた上橋菜穂子さん。2015年4月7日、最新作『鹿の王』で、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」を受賞され・・・”

私は獣の奏者以外はまだ読んでいないので、次は「鹿の王」読んでみようと思っています。
これもKindle版が出ており、Kindle派にも優しいです。

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