[Evernote]Evernoteアカウントの相続 – 自分の死後、妻や子供にアカウントを引き継ぐことはできるのか?

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平成25年合格の司法書士、坂根(@sakane0958)です。
今日はEvernoteの相続に関して、以前(2013年8月)Evernoteのサポートに問い合わせた内容を紹介してみます。

Evernoteの簡単な紹介

その前に、Evernoteをご存じない方のために簡単にEvernoteの説明をしましょう。
Evernoteは、私の愛するクラウドツールの一つです。

Evernoteのキャッチフレーズは「全てを記憶する」。
第二の脳」と呼ばれることもありますが、後で思い出したいもの、取っておきたいものを、テキストや画像、音声ファイル等々、およそファイルになる形式ならたいがいのものを記録しておくことができます。

活用例:名刺の管理

具体的な活用例の一つとしてよく挙がるものの一つとして、名刺の管理があります。
私も名刺は全てスキャンしてEvernoteに記録しています。
紙の名刺が手元に無くても、スマートフォンのEvernoteアプリからいつでも名刺を確認できます。

例えば銀行を訪問する際「以前会った方の肩書きは何だったかな?」と面会直前にふと不安になった時、Evernoteで管理をしてあれば、きちんと確認して、自信を持って対応することができます。

また、私は人の顔と名前を覚えるのが苦手ですが、顔写真が手に入る人であれば、名刺ノート(Evernoteでは一つの記録の単位を「ノート」と呼びます)に顔写真を画像として貼り付けておけば、もう忘れることはありません。

自分にとって大事な人なのに、なかなか顔が覚えられない、という場合があります。
こういうケースにおいては、特にこの対策を徹底するようにしています。

Evernoteのアカウントを相続できると何かの役に立つのか?

親の付き合いの情報

私は結果として親の地元で商売をしていますが、親も昔は地元で商売をしていました。
親の知り合いといっても様々なお付き合いの方があり、子供の私達もよく知っている方もあれば、名前しか聞いたことが無い方もあります。

きっと、親に訊けば教えてくれると思いますし、機会があれば話を聞くことができますが、そのようにして得られる情報はとても断片的で、結局一度も話を聞くことなく終わってしまう方もあると思います。

それが、もったいないと感じるわけです。昔はそれが当たり前だったということはわかります。
そして、だからこそ親と話ができる間に、たくさん話をしておくべきなのだろう、とも思っています。

Evernoteで状況は変わるか?

しかし、これからは「情報」という面だけにおいては、違うのではないか、と。
つまり、私が死んだ後、妻や子供達にはある程度の情報くらいは遺してやれるのではないか、と。
Evernoteで時代は変わるのではないか、と思うのです。

地元で商売をするにあたって、少しでも多くの人間関係を知っていて損になることは無いと思います。
同じ父の知り合いと出会ったにしても、予めどういう関係かわかっていて話をするのと、「お父さんとは昔・・・」という話をされてみてから、「(父とお付き合いがあったのか)」と気付くのとでは違いますよね。
そして、その後に父に訊ければまだマシですが、親がもう亡くなっていたら訊くこともできません。
その後、その方から父との昔話を聞き出すくらいの関係になれたら良いですが、そういうケースばかりでもありませんよね。

今になって、子供の頃からもっと親の交友関係に興味を持っておけば良かった、と思うわけですが、当時は自分にとって大した利害関係があるとも思っていなかったし、どこまで理解できたのかも怪しかったろうと思います。
勉強とか情報にはそういう「時期」とか「必要性」という面があって、必要な場面にならないと、本当に頭には入ってこないものだと思っています。

そういう意味でも、自分の子供達にとって、今は必要無いかもしれないけれども、将来「知りたい」と思った時に参照できるものが遺せたらいいな、と思っています。
オヤジが書いた雑文の寄せ集めのようなもの、子供にとってガラクタにしか過ぎないかも知れませんが、使うかどうかはともかくとして、使えるようにはしておいてやりたいな、と思うのです。

そういう意味でも、子供達にも役に立つように、名刺ノートには第一印象や、真面目そうとか信用できそうとか、主観的なこともできるだけ書くようにしています(もちろん、自分の覚えとしての意味もあります)。
親の私が信用できると思った人は、子供達にもきっと良くしてくれると思っていますし、子供達が付き合いを考える上で参考になると思っているので。

Evernoteのアカウントの相続(本題)

さて、本題です。
Evernoteのサービス利用規約にこんな下りがあります。

私が死んだら私のアカウントはどうなりますか?

Evernote のユーザのコンテンツのプライバシーを保護するという約束は、たとえ本人が死亡または無能力者になられた場合にも継続されます。そのような事態になった場合にユーザのコンテンツやアカウント情報へのアクセスを誰かに許可することを希望される場合は、アカウント情報へのアクセスをそのような個人に提供するための手続をとる必要があります。当社では法的に義務付けられない限り、ユーザのアカウント情報やコンテンツは誰にも(ユーザの近親者にさえも)提供することはありません。アカウント情報をコンテンツへのアクセス方法と共に、遺書またはその他の財産相続計画に含め、ユーザがご自身のアカウントへの アクセスを許可したい人にその手段を与えることができるようにすることをお勧めします。死亡時や無能力者になった場合にプレミアムサービスへの支払いを停止する件については、支払い・ポイントに関する条項をご覧ください。

原則の取扱

これを読むと、原則としては自分が死んだらアカウントも死んだようなもの、と考えて良さそうです(確か情報は保存はされ続けるはずですが、もはやパスワードを知る人間がいないので、誰も事実上アクセスできない)。

この取扱は、死者に対する郵便物についての郵便局の取扱(死亡した受取人あての郵便物等を家族に転送してもらえますか?)と共通するものがあります。

つまり、不動産や預金のように相続人が協議をすれば相続人が帰属を決められる種類のものでなく、死者のプライバシーを尊重し、特段の意思表示が無ければ相続人にも開示しないのが原則ということですね。

例外:誰かにアクセスを許可したい場合

上記のサービス利用規約には原則の取扱以外に、「アクセスを誰かに許可することを希望される場合は・・・提供するための手続をとる必要があります」とあります。
この「提供するための手続」とは、具体的に何でしょうか?というのがEvernoteサポートに問い合わせた内容です。

ちなみに私の事前の想定としては、公正証書遺言等でアカウントを特定して利用させたい者を特定した遺言を遺しておけば、私が使っていたパスワードが妻や子供にわからなくても、彼らにアカウントが使えるようにしてもらえるのではないか、と考えていました。

実際にサポートに問い合わせをしてみると、これまでこのような質問を受けたことは無いみたいで、本部に問い合わせたり、こちらの意図がなかなか伝わらなかったりで、やりとりは複数回に及び、結構な期間もかかりました。

結論としては、次のような話でした。

  • 遺言書に、アカウント、パスワード、2段階認証等、アカウントを使用するための全ての情報を記載しておく
  • パスワード再発行にかかるメールアカウントや、2段階認証用のAndroid端末等も、全て物理的に承継者が利用できる必要がある
  • 逆に、物理的にそれらにアクセスできることが全てで、Evernote側では承継者からの法律的なパスワード再発行等には応じない
  • つまり、メールや2段階認証等の不可欠要素のどれかが欠けたら、アカウントは誰からもアクセスできない状態となってしまう

Evernoteからの返答を受けて考えたこと

私が最初に感じたことは、「Evernote社としては自社のサービスをその程度のものとしか考えていないのか」ということでした。

故人が相続人にEvernoteのアカウントを自分の死後も利用させたいと考えていても、うっかりパスワードを更新した後に遺言への反映を忘れたまま死んでしまったら、あっという間に死にアカウントになってしまう。
また、Google社が死後のGoogleアカウントの運用を厳格にして、銀行のように「本人の死後はアカウントを凍結する」という運用を始めたら、Android端末を利用した2段階認証はすぐに動かなくなるでしょう。
また、メールアカウントにアクセスできなければならないとすると、故人としてはEvernoteだけを利用させたいのに、結果としてEvernoteとは関係無い全てのメールも利用できる権限を与えないと、Evernoteも使えない、という権限の範囲の問題もあります。

私にとって、Evernoteに蓄積してきた記録はもっと大事なものです(相続人にとってどうかはわかりませんが、少なくとも現時点の私にとっては)。
死んだ後は風化して無くなってしまえば良いという程度のものではありません。

そして、私が相続や遺言に携わる業務をしているので、特にそう感じるのかもしれませんが、死んでしまった後に遡って故人が遺言をやり直すとか、していなかった遺言をするということは、できないのです。
人が死ぬということは、時系列において越えることのできない厳然とした壁なのです。
そして、自分がいつ死ぬかということは、自分ではコントロールが効かない範囲の出来事で、私だって明日死ぬかもしれないのです。
もう少し現実的な選択肢を与えてもらえたら、と思います。

100年企業を目指しているEvernote社ですが、そうは言ってもまだまだ若い企業ですから、そもそもこんなことを望むこと自体が間違っているのでしょうが、今後には期待しています。

実際の運用案

サポートからの返答を受けて考えるには、結局、Evernote側では本人が死んでいようといまいと大した問題ではなく、Evernote側では関知しないし、どちらかというと本人のアカウント管理の実際的な話に過ぎない、という印象を受けました。
そもそも、メールアドレスとパスワードがわかってしまえば相続人でなくてもアカウントにアクセスできてしまうわけですし、一IT企業であるEvernote社が戸籍を取って本人が死んでいるのか生きているのかを確認するというのも、今の時点では想像できないですね。
そう考えると、現状のEvernote側の運用は致し方ない。

そうすると、結局妻や子供にわかるように、生前からアカウント情報(ログインに必要なメールアドレス、パスワード)を伝えておく、又は確認できる情報を与えておく、ということになるかと思います。
私の場合は、ランダムパスワードを定期的に更新するという運用をしているので、特定の場所に置いたパスワード管理ソフトへのアクセス方法と、そのアクセスパスワードを伝えておく、という運用になるでしょうか。

2段階認証についての考察

そして、Evernoteアカウントの相続をしようと思ったら、事実上2段階認証は使えない、ということになるでしょう。
まず、私はGoogleなら、近い将来、本人の死亡が判明後はアカウントを凍結する、という運用を始めるかもしれないと考えています。
次に、2段階認証を使えるということは、Android端末へのフルアクセスが可能な状態でしょうから、メールはおろかSNS、キャリアメール、何でも見られるという状態になります。
Evernoteの情報を使えるようにしたいだけなのに、そこまで相続人に見せなければならないのかどうか。
上述した権限の範囲の問題と共通する話です。

編集後記

何だかEvernoteに対して辛口な記事になってしまったような気がします。
でも、私はEvernote大好き人間ですし、無くなったら困るので、ぜひぜひ今後も末永くサービスを提供し続けて欲しいと願っています。
それにサポートの担当の方も、よくもまぁこんな面倒臭い質問に根気強く対応してくれたものだと思います。
面倒臭いユーザーで恐縮です。

さらに言えば、こんな手間をかけて相続できるようにしたところで、妻や子供が使う保証はどこにも無いのが悲しいところ。
私の血をひいているので、もしかしたら長男か長女は、将来興味を持ってくれるかも知れません。
彼らが成長した頃には、もう時代遅れのツールになっている可能性もありますが、仮に私が早死にしたら、父親の考えていたことなど知りたいと思うかも知れませんから、遺しておくことには何らかの意味があるのではないかと信じて、こんなことをつらつらと検討したりしてみました。

参考記事

旧ブログの過去記事から、Evernote記事をいくつかピックアップしてみます。

[Evernote]Windowsクライアントで検索対象が勝手に「すべてのノートブック」になる場合の対処法

最近のEvernoteのWindowsクライアントのアップデートで、ノートの検索の仕様が変わりました。
元々の仕様が良かったのに、という方向けの記事です。
完全に元の通り、というわけにはいきませんが、マシにはなります。

[Evernote]プチフリが多い時にはデータベースの最適化をしてみる

旧ブログでのPV稼ぎ頭記事の一つ。
Evernoteが重いと感じ始めたら、試してみましょう。

[Evernote]画像をムリヤリ暗号化してみる

ネタ記事です。
どうしても暗号化したい画像があれば、この方法で暗号化できなくもないです。
ただし、復号化は通常のテキストより手間がかかります。

[Evernote]ノートの作成時刻の変更方法

自分がなかなか気付かなかったので、記事にしました。
気付いてしまえば、どうということはない話です。

[Evernote]添付ファイルの脱落、反映漏れへの対応

パソコンをハードディスクで動かしていると、特によく遭遇する印象です。
ちなみに、ハードディスクをSSDに換装してから、このトラブルは激減しました。
Evernoteを頻繁に使う上、しょっちゅう添付ファイルが壊れる、最新版にならない、というトラブルが頻発する場合は、HDDをSSDに換装すると幸せになれるかもしれません。

[Evernote]enexファイルの中身はXML。JPGのOCRは冗長構成。

バイナリファイルかと思いきや、EvernoteのノートをエクスポートしたenexファイルはXMLファイルです。
つまり、テキストファイル。
EvernoteにはJPGのOCR機能がありますが、そのOCRは、EvernoteがOCRして得た複数の候補をノートに収めることで、完全なOCRが実現できない状態でも、検索にヒットする仕組みとなっています。

[Evernote]マージのデメリット

私が一番よく意識するデメリットは「ノートリンクが変わってしまうこと」です。
作成後、間もないノートなら気兼ねなくマージすれば良いのですが、昔からあってよく使うファイルをマージする際には「このノートはノートリンクをどこかに貼っているノートだろうか?」ということを意識します。
どうしてもマージが必要な場合、ノートリンクを貼り替えてやらないとリンクエラーになってしまいます。

[Evernote]PDFでなくJPGで保存するメリット

PDFは便利な面もありますが、JPGでもPDFでも差し支えない状況では、ほとんどJPGでことたります。
JPGの良いところの筆頭は、「スマホですぐに確認できること」です。
スマホだと、PDFを開くのにいったんSDカード等にダウンロードが必要だったり、アプリが必要だったりします。
JPGだとスマホのEvernoteアプリから直接開くことができます。

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