平成25年合格の司法書士、坂根(@sakane0958)です。
この記事は、中央新人研修前期のまとめ記事からのスピンオフ記事です。
せっかく別記事にしたので、事例まできちんと引用してみましょう。
講義で問題提起された事例
(第1幕/貸金業者による最初の貸付と虚偽の保証)
工場を個人で営むXは、貸金業者であるYから、2005年4月3日、120万円を借り入れた。この際、YがXに対し保証人を立てることを求めたことから、Xは、双生児の弟で同居するZが知らないうちにZが保証をする旨の保証契約証書を作成してYに差し入れた。(第2幕/貸金業者によるさらなる貸付と虚偽の物上保証)
Xは、Yに対し、さらなる資金の貸付を要請したが、Yは、不動産を担保に入れるのでない限り新しい貸付は難しいという態度を示した。そこで、2007年10月7日、Xは、Zが知らないうちに、Zが、その所有する本件土地に抵当権を設定する旨の抵当権設定契約証書を作成し、また、Yは、Xに対し返済期限を2008年10月7日として300万円を貸し付けた。司法書士であるAは、Zを称するXと面談して抵当権設定の意思などを確認する旨の発言を得たうえで、Y・Zのためにする趣旨で抵当権設定登記を申請し、この登記は、2007年10月21日に実行された。(平成25年度司法書士中央新人研修講義要項Ⅰ 「司法書士の職責と業務」P16)
講義で提起されたのは「このXのなりすましを司法書士としてどう見破るか?」という問題です。
講義中では解答は示されませんでしたが、皆さんは答を見つけられたでしょうか。
司法書士として怖いのは何か?
この事例は単純に机上の話として考えるべきなのかもしれません。
あまりにうがち過ぎな見方かもしれませんが、私が自分の答えに辿り着くまでにヒントになったので、ここで紹介しておきます。
そもそも、双子はたいてい仲が良いはずだ。
同居して一緒に生活しているのならなおさらだろう。
片方が相手を裏切るほどずる賢いのであれば、他方も同じくらいずる賢いだろう。
ずる賢い同士の双子が同居して生活しているということは、お互いに裏切られない自信があるということだ。
そういう前提で考えると、一番怖いのは「初めから双子は通謀していて、最後は司法書士から損害賠償をだまし取るつもりだった」というパターンです。
Xは、もともと傾きかけていた事業の存続にたいした興味は無く、Zが被害者面して司法書士から受け取った損害賠償を山分けするつもりだった、というような背景が考えられるでしょうか。
そう考えると「こうするしかないんじゃないか」という答を思いつきました。
私の答を見る準備ができたらスクロールしてください。
私の考えた答え
「兄弟2人同時に本人確認する」というのはどうでしょうか。
少なくとも、ZにもXのやろうとしていることを知る機会が担保されます。
Xが本気で欺こうとした場合、初対面の司法書士がXとZの識別をすることは不可能に近いでしょう。
不可能なら、識別しなくても済む方法を考えよう、という方針転換です。
また2人同時に本人確認すれば、XとZはその場でお互いの話していることを聞いていますから、XとZが通謀した場合のリスクも回避できます。
双生児の兄弟が居ることを明かさないなりすまし
「兄弟2人同時に本人確認する」というやり方で穴は無いかな、と考えていたところ、対応できないパターンを考えついてしまいました。
Xが自分を債務者として金を借りるのではなく、最初からZになりすまし、しかも双生児の兄弟が居ることは明かさずに、Zとして金を借りる、というパターンです。
これをやられると、手も足もでない。
ただ、そもそも双生児の兄弟が居ることを知らされずになりすまされたら、司法書士であろうと弁護士だろうと誰だろうと本人確認で気付くことはできないでしょうし、見破ることは不可能でしょう。
司法書士の責任を追及されることは無いのではないか、という気もします。
本人確認の度に「あなたに双子の兄弟はいらっしゃいませんよね?」と確認するわけにもいかないですから。
編集後記
後記研修の宿題もやらなければならないのに、先送りしてこんな記事を書いてしまいました。
もう冬休みも終わってしまうので、そろそろやらないと。
私の解以外に、こういうやり方があるけど、という解を思いついた方や、私の解の穴を見つけた方、ぜひコメントや問い合わせフォームから教えてください。
同期の皆様と議論を深められたら嬉しいです。
参考記事
[司法書士]中央新人研修・前期講義のまとめ
神戸での新人研修の講義の中から、私の心に留まったポイントを整理してみました。
講義で寝ていた人にもオススメ?
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