明けましておめでとうございます。平成25年合格の司法書士、坂根(@sakane0958)です。
かなり間が開いてしまい、今更感はありますが中央新人研修前期(神戸会場)の講義を振り返ってまとめてみたいと思います。
中央新人研修の目的として、同期の繋がりを作るという側面も大きいわけですが、3日間に渡る講義も寝て過ごすには惜しい講義ばかりでした。
私のフィルターを通した主観的なまとめになりますが、心に残った部分を簡単に振り返ってみたいと思います。
講義の内容と、自分のコメントが入り混じるとわけがわからなくなると思うので、自分の感想は最初に「感想:」と入れています。
司法書士の歴史
司法書士の歴史は正に、「市民のための法律家」としてスタートしている。
司法書士制度の確立にあたり、政府との確執の歴史があった。現在の司法書士の地位や職域は先人の努力の賜物。
司法書士が一応制度化された後も、昔は試験制度が無く、政府の認可で司法書士になれた時代があった。
政府と司法書士会連合会との確執から、大量認可されたりした時代があった。
その大量認可によって司法書士会の会員でない司法書士が増え、質が低下。
法務局の窓口業務が混乱を来し、政府も司法書士会による司法書士の管理強化を期待するところとなった(政府との力関係が対等に近づいた)。
感想:講師の先生(弁護士)の「司法書士史」への愛が感じられる講義でした。
講師の先生が紹介していた日本司法書士史の書籍をAmazonで検索してみましたが、結構なお値段ですね。
法律家を目指す君たちへ1 ~司法書士になるみなさんに伝えたいこと~
懲戒を受けやすい3類型
グレーなことをやっていそうな司法書士よりも、むしろこういうタイプの方が危ない。
- 友達がいない一匹狼
- 体力が無い
- 気が弱い
1.友達がいない一匹狼
断った方が良いような案件を相談できるような、信頼できる仲間をこの3日間でぜひ作っておいて下さい。
相談したときに「それ、絶対マズいよ」と教えてくれるような仲間を。
2.体力が無い
気力、体力が衰えてくるといけない。
感想:講義の冒頭、何度も「寒かったら遠慮せずにコートを着て講義を受けて下さい」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
3.気が弱い
気が弱いのは「悪」である。気の弱さは身を滅ぼす。
例えば本人確認を疎かにせず、どうしても応じてもらえないなら依頼を断るくらいの気概は必要。
司法書士の倫理
professionという言葉は聖職者、医者、法律家にしか使えない。
「人のためにすることを誓う」という意味がある。
司法書士の職責と業務
ペデストリアンデッキは登記できる建物か?
感想:私も東京に住んでいた時期があるはずですが、「新宿駅のペデストリアンデッキ」と言われてもどういうものかなかなかイメージできませんでした。
ちなみに後日ネットで確認したところ、講師の先生の言葉から推測した姿は、だいたいあっていました。
後見業務
ぜひ専門職後見人になって欲しい。
個人として、社会の一員としてお願いしたい。
司法書士の経営的には薄利多売の業務。
簡裁訴訟代理等関係業務?なぜ「等」という字があるの?
答えは「筆界特定」もあるから。
筆界特定の領域でも、ぜひ活躍して欲しい。
同居している双生児の本人確認
登場人物は、事業を営むX、貸金業者Y、Xと同居する双生児の弟Z。
XがZを装ってZ名義の不動産に抵当権を設定しようとした場合、司法書士はどのようにして見破れば良いだろうか?という問題。
(ちなみに講義中では解答は示されませんでした)
感想:講義を聞いていた時には答を思いつきませんでしたが、この記事を書くために講義を振り返っていて思いつきました。
私が考えた答はこちらの記事を参照ください。
不動産登記と司法書士
代金決済は3すくみ4すくみ
買主は、売買代金を払う前に所有権移転の登記をして欲しい。抵当権がついたままの不動産は買いたくない。
売主は、売買代金をもらう前に所有権移転の登記はして欲しくない。
売主の抵当権者は、売買代金から残債務を受領するまでは抵当権抹消には応じたくない。
買主の抵当権者は、買主に所有権が移転し、確実に抵当権が設定できる状態でなければ融資は出したくない。
そういった3すくみ4すくみ状態を解決するには、全てを同時にやるしか方法が無い。
そのために、中立的な立場として司法書士が「同時に登記できる」状況にあることを確認し、OKを出すことが司法書士の存在意義の一つ。
売買契約書
売買契約書をチェックする際に特に重要な項目
- 建築条件
- 引渡し時期
- 利益相反取引
決済の出席者の確認は重要
本人が決済当日来られない場合は、事前に面談する。
そして、代わりに出席する人への委任状を書いてもらうようにすること。
売買契約書の契約条項本文は売主も買主も読まない
一般人の売主、買主が読むのはせいぜい表形式になっている部分くらいで、本文を読む当事者はほとんどいないと思った方が良い。
司法書士はそれを踏まえて決済に臨む必要がある。
登記空白を避ける方法は存在しない
決済でOKを出した後、差押え等が入る可能性をゼロにすることは理論的にできない。
司法書士にできるのは、決済後できるだけ速やかに申請書を提出することだけ。
商業登記と司法書士
顧客にただ言われるままに申請書を作って出すだけの司法書士でなく、顧客の環境を想像して提案ができる司法書士になって欲しい。
定款で役員を「X名以内」と定めるメリット
例えば取締役を10名以内と定め、10名フルに選任しておく。
すると、株式を取得されて乗っ取られそうになった際、役員を送り込まれるハードルを上げることができる。
取締役の定員を増やすには特別決議が必要となるし、誰かを解任して送り込むのも単純に新任取締役を送り込むより手間がかかる。
登記記録を見ただけでわかる情報から、どういう会社か想像を巡らせてみて欲しい
- 会社成立の年月日 ←若い会社か、老舗か
- 商号、目的 ←何をやってる会社か
- 役員に関する事項 ←就退任記録から推測できることがあるか
依頼内容と併せて見ると、いろいろなことが見えてくる。
司法書士が株主名簿管理人になることのメリット
感想:上場するような大きな会社が証券会社を株主名簿管理人にする、というイメージしか無かったので新鮮だった。
法律家を目指す君たちへ2 ~次代を担うみなさんに伝えたいこと~
前半後半、それぞれ別の講師という形態の講義でした。
司法書士にはいろいろな働き方の選択肢がある、ということを知ってもらう趣旨だと思いました。
前半:法人勤務について
全国に4箇所の事務所を設け、職員数84名(内司法書士20名)という司法書士法人勤務司法書士の講師から、司法書士法人での働き方についての紹介。
感想:一言で言えば、バリバリ働きたい人向けの職場だと思いました。
私は地元に根をはって生きていこうと思っているので、参考程度に聞いていたのですが、若い人で成長志向溢れるタイプには向いているだろうと思います。向く人にはとことん向いているでしょう。
後半:父親の介護をしながらの司法書士業務
難病にかかってしまった父親の介護のため、自宅や病院で付添えることができる仕事、独立開業できる仕事、ということで司法書士を志望。
講義の中では、介護しながらの細々としたスタートから、病院での看護師さん等々との繋がりから仕事にも繋がっていった。
感想:前半の法人勤務の講師とは対照的な事例ながら、誠実に真面目に仕事に取り組んでいれば、周りの人達はちゃんとそれを見ていてくれて、どうにかなっていくものだ、と感じました。
もちろん、そのようにうまくいく事例ばかりではないだろうけれども。
裁判関係業務と司法書士
平成14年法改正の弊害
「140万円を越える仕事は弁護士へ」という意識が無いか?
平成14年以前は、140万円以下の仕事でも1000万円の仕事でも、書類作成業務は普通にしていた。
代理する仕事については140万円の制限はあるが、書類作成業務にはその制限は無い。
「140万円オーバー=弁護士の仕事」と思い込まず、きちんと選択可能な選択肢を検討しよう。
成年後見業務と司法書士
「焦らず、しかし怠らず」
講師の先生の座右の銘。
司法書士の仕事は、人とお金は後からついてくるもの。
お金を掴みにいく仕事ではない。
2030年問題
団塊の世代が80代に突入する。
「後見爆発」とも呼ばれている。
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート
成年後見の分野は、弁護士の二番煎じでなく司法書士がトップを走ってきた分野。
リーガルサポートは、司法書士会連合会の主導で設立。
定期的な研修義務、定期的な報告書提出義務があり、それらを満たさないと名簿に記載してもらえない。
逆に言えば、名簿に記載されている会員はそれらの義務を果たし、一定の水準以上の会員であると言える。
退会時に自由退会はできず、退会時に業務報告書を提出し、審査を受けなければ退会できない。
それが無い場合は、「除名」処分になる。
本人の権利擁護の視点、相談者への説明
相談者(依頼者)と、権利を守られるべき「本人」が異なることが多い。
制度利用の「結果」が必ずしも相談者の思惑どおりにならないことも多い。
例えば、本人が相続人の一人である場合、法定相続分を下回る遺産分割協議をするには、家裁に説明できるだけの合理的理由が無ければならない。
また、遺産分割協議が終わっても後見は終わらない。本人が亡くなるまで、後見は続くということを相談者にきちんと説明しなければならない。
その他
- 高齢者の絡む賃貸借の問題
- 高齢者の株主(高齢の役員)の問題
平成24年の認容事件数 司法書士6382件(19.8%)
来年はぜひ、「この中の1件は私なんです!」という嬉しい報告をして欲しい。
感想(全体):成年後見業務は、やりがいのある仕事だと思います。
自分も将来やることになるだろうと思うし、興味はあります。
業務はルーチンばかりではありませんが、ルーチンも多いのでGTD等のスキルも役に立つでしょう。
ただ、現状は手間と報酬が釣り合いにくい仕事ではないか、と感じます。
後見制度を必要とする人は経済的に余裕のある人ばかりではないし、むしろ余裕の無い人の方が手間はかかるのに、報酬は少ないことが多い(これは、本人の財産額がベースになるから)。
多く受任すれば、スケールメリットも出るし、全体として手間と報酬のバランスは取れるのでしょうが、制度としてそれで良いのかな、と。
基本的には手間と報酬がある程度比例するような制度が理想的ではないかと思います。
じゃあ、どうすれば良いのかというと、私にはそこまでの案はありませんが。。。
法律家を目指す君たちへ3 ~法律家の使命感~
講義のメインは、市バスの運転手さんの相談に端を発したクレサラとの闘いの歴史。
今でこそなりを潜めた違法な取り立てがまかり通っていた時代、市民の側に立ってクレサラ業者と闘ってきた。
関連する法整備にも尽力した。
感想:地道な実績の積み重ねから、世論を動かしていくような大きな流れを作り、法整備までこぎ着ける、という点では司法書士史と通ずるものがあると感じた。
編集後記
こうして振り返って見ると、曖昧な理解しかできていないものですね。
解釈の誤り等あれば、私の責任でございます。
また、もし「ここ、どういう話だったっけ?」という部分がありましたら、遠慮無くご連絡ください。
また、問い合わせメニューも新設したので、公開コメントに抵抗がある方はこちらからどうぞ。私宛にメールができます。
それぞれ私に分かる部分であれば、ご説明させていただきます。
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