島根の司法書士、坂根(@sakane0958)です。
↑この「ファスト&スロー」という本を読んでいます。
上下巻の上巻の20%という進捗ですから、全体の10%まで読んだところですが、大変面白いです。
きっかけ
シゴタノ!の大橋さん、佐々木正悟さんがそれぞれ記事にされていたので、きっとそちら方面の面白い本なのだろうと思いつつ、なかなか手に取れなかった本でした。
面白いし役に立つ『ファスト&スロー』 | シゴタノ!
”ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』は非常に面白い本ですが、ただ単に面白い本ではなく「面白い上に役に立つ本」です。”
一つには、読むのに時間がかかりそう。上下巻という部分で少し引いてしまいます。
もう一つには値段の問題。高いです。
そのような事情で「ほしい物リスト」には長らく居たものの、なかなかお声がかからなかった本でした。
しかしこの度、佐々木正悟さんの「タスクシュート時間術」を読み終えた後、kindleで購入しました。
確かタスクシュート時間術の中に「これ、ファスト&スローの中に出てくる話だろうな」という一節があったのです。
あとは雰囲気というか、ノリみたいなものですね。
ちなみに通常版だと2,268円もしますが、kindle版なら1,512円で買えます。
ファストとは?スローとは?
10%の進捗で中身を語るのもどうかと思いますが、核になる部分は既に出てきていると思います。
システム1、システム2と定義された、この二つのシステムの対比がこの本の主題でしょう。
システム1とシステム2は、それぞれ脳の人格の一つと考えると良いと思います。
システム1は、直感的に素早い判断をします。発動させようと思わなくても常にシステム1は稼働していて、勝手に判断しようとします。脳のリソースもほとんど使わず、省エネですが、しばしば間違う。
他方のシステム2は、理性というべき役割。稼働させるのに努力を要し、出てきてくれればシステム1の誤りをただすことができるけれども、怠け者でリソースも喰う。
つまり、本のタイトルのファスト=システム1、スロー=システム2というわけです。
人間の頭は、普段はシステム1をベースに働かせつつ、必要に応じてシステム2を呼び出して仕事をさせるけれども、常時システム2を稼働させ続けることはできない。
システム1は常に稼働し続けていて、勝手に都合の良い判断をし、システム2を前に出させまいとします。
また、疲れているとシステム2に仕事をさせようとしても、うまく動かなかったりします。
司法書士の仕事はシステム2寄りだと思う
一般の方が普通に申請書を作っても、ほとんど間違わないような登記制度であれば、司法書士なんて要らないと私は思います。
でも、登記申請には多くの落とし穴がある。
代表的なものでは、「登記名義人表示変更登記(いわゆる名変)忘れ」による取下げ。
登記義務者の住所等に変更があったにも関わらず、それを見落として登記申請を出してしまうと、「いったん取り下げてから、名変を噛ませて再申請してください」と法務局から言われることになります。
登記簿の住所と、今から申請する申請書の義務者の住所を照合しさえすれば防げるミスですが、システム1のみに任せていると容易にスルーされてしまいます。
名変が「たかが名変、されど名変」と言われる所以です。
司法書士は「それらしく出来上がった申請書一式」に不備が無いか、システム2的な観点で「補正や取下げの無い申請書」を作ることが仕事だと思います。
司法書士は全ての仕事でシステム2を稼働させ続けるべきなのか?そもそもそんなことは可能か?
私は司法書士はシステム2のコントロールが上手になるべきではあるが、常時システム2のみで仕事をしなければならないわけではない、と考えています。
例えば全ての登記において、名変が必要か不要か省略できるから省略すれば良いのか、検討するステップは必要だと思います。
しかし、毎回システム2で考える必要は無く、それが仕事の流れのなかで自然に確認できるような仕事の流れを作れば済むことだと思います。
また、経験したことの無い業務においては、システム2に頼って一つ一つ確認しながら進める部分がどうしても多くなってしまいますが、同種の業務を何件も経験することによって、システム2が担当しなくてもシステム1で処理できる範囲が増えていくと思います。
さらに要点がわかってきた後はチェックリスト等を使って、多くの作業をシステム1に任せ、必要な時だけシステム2を呼び出せるようになると思うのです。
流れるような一日を作り上げるために
このブログのタイトル「流れるような一日を」に込めた思いとして、一日一日の起伏を少なくして、滑らかな一日をデザインし、やりたいことにリソースを割きたい、という思いがありました。
これをシステム1とシステム2に置き換えて表現すると、「日常の大部分をシステム1で問題無く回せるようにして、十分なリソースをシステム2を残しておけるようにしたい」ということになります。
日常の大部分をシステム1で処理するために、タスク管理や仕事術を活用する、ということになりますね。
編集後記
個人的に司法書士の仕事とシステム2の関係について思うことがあったので、進捗10%で記事を書いてみました。
まだまだ先があるので、読み終わった後にはまた違うことを感じているかもしれません。
ファスト&スローのボリュームがかなりのものなので、当分先のことになりそうですが、佐々木正悟さんが「『ファスト&スロー』と甲乙つけがたい面白さである」と言う「ずる―嘘とごまかしの行動経済学」も面白そうだなぁ、と思っています。
読み始められるのは、いつになるやら、という感じですが。
関連記事
[TaskChute]「なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか? 「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術」を読みました
佐々木正悟さんの最新作の紹介記事。
既にTaskChuteユーザになっている方が読んでも面白い本だと思います。
[司法書士試験]なぜ嫌らしいひっかけをたくさん出題するのか
名変で足元をすくわれる話など書いています。
私にとって「佐々木正悟」という人はどういう人か
佐々木正悟さんの仕事術は、仕事だけでなく受験勉強(司法書士試験等の資格試験含む)にも応用できる話だと思っています。
時間はあるけど、つい勉強でなく他のことをやってしまう、やらなきゃいけないとわかっているけどなかなかとりかかれない、等の症状にお悩みの方は、気になるタイトルを一冊選んで読んでみると、対処法が見えてくるかもしれません。
[TaskChute]TaskChuteでなければならない理由
チェックリスト絡みで、TaskChute2でチェックリストを活用する方法の紹介など。
コメント
今回も色々と勉強させていただきました。
ありがとうございました。
>ショシ・ヨークさん
コメントありがとうございます。
なかなかマニアックな話にコメントいただき恐縮です。
ショシ・ヨークさんのように、需要のある話を書けたら良いのですが。
どうしても一般の方とは異なるところに興味があるようで困ります。