平成25年合格の司法書士、島根の坂根(@sakane0958)です。
長く感じた近畿での特別研修も無事終わりました。
終わってからかなりの時期が経っているのに、今頃特別研修の記事かよ、という感じですが、来年以降の受講者への記録の意味も込めて振り返ってみます。
裁判傍聴
大阪地方裁判所にて、双方弁護士のついている民事訴訟の傍聴をしました。
内容についてここで書くことはできませんが、法廷の雰囲気や主尋問、反対尋問の攻防など、机上の勉強や再現VTRでは感じられない部分を体験することができ、勉強になりました。
司法書士の先輩である妻が以前、「裁判期日の日には早めに行って、法廷で行われている他の裁判を傍聴すると勉強になる」と話していたことがありましたが、こういうことか、とよくわかりました。
模擬裁判・金銭訴訟
私は2グループでしたが、1グループを原告、2グループを被告として、模擬裁判を行いました。
事案の概要
原告は保証会社、被告側は民間人一家。
息子の債務を父親が連帯保証し、父親は訴訟が始まる直前に死亡、その連帯保証債務を相続した母親が息子と共に被告となっている事件。
争いの焦点は、「父親の連帯保証が有効に成立していたかどうか」という点。
息子の債務については逃れようはなく、被告側としては母親に火の粉がふりかかるのを防げたら勝ち。
被告側は、父親の実印は押印してあるものの、息子が父親に嘘をついて実印を持ち出して押印したものであり、保証会社も信用金庫も父親の本人の意思確認をしていないので連帯保証は無効、と主張します。
原告側には書証が揃っており、基本的に原告が有利な事案。
私の班の役割:原告側証人の反対尋問
グループ内はさらに3つの班に分かれていて、私は2班。
我々の班は、原告側の証人である保証会社の担当部長の反対尋問を担当しました。
この証人は、直接父親とも息子とも接触しておらず、被告側として何を訊くべきか、悩みました。
相手方の出方を想像したり、なかなか頭を使った気がします。
結果
結果として2グループは敗訴し、母親の債務を免れることはできませんでした。
我々のグループは自信を持って和解を蹴っていたので、これが模擬裁判で本当に良かったな、と思いました。
現実の実務で負け筋の和解を蹴っていたら、大変なことです。
事後の弁護士の先生の講評によると、2班の反対尋問においては立証までする必要は無く、相手側の証人の証言の信用性を揺らがせることができれば十分。
熱くなって突っ込み過ぎるより、メリハリをつけた尋問をするのが良い、ということでした。
具体的には、原告側証人が本人確認をしていないことをもっと突っ込んで聞き、「実印が押印してある事実のみをもって代理権があると信じたのか?」という部分を攻めれば、勝ち目があったかもしれない、ということでした。
尋問技術についての講評
その他、一般的な論点の講評として、弁護士の先生及び裁判官役の受講生から、下記のような指摘がありました。
- 主尋問は明快なやりとりが多かったが、反対尋問は問と答が噛み合っていないことが多かった。また、反対尋問が長過ぎる。
- 「さっき」などの曖昧な表現が多かった。具体的に訊かないと、裁判官に伝わらず、スルーされる。
- 些末な部分の誤りをここぞとばかりに責め立てても、良い心証を与えない。
- 尋問する代理人側で、証人が結論から答えるよう導くようにすると良い。証人が言い訳から答え始めると、聞いていて流れを掴みにくい。
模擬裁判・建物明渡訴訟
今度は金銭訴訟とは立場を変えて、2グループが原告、1グループが被告という構成でした。
やはり原告有利なので、両方の立場を経験しておくべき、という配慮なのでしょう。
事案の概要
事案がなかなか複雑で、一言で説明するのが難しい事件です。
ちなみに、金銭訴訟は例年同じ事案らしいですが、建物明渡は今年から事案が変更になったそうです。
事案の構成ですが、原告は建物の所有者、被告は賃借人。原告は所有権と賃借権の存在を証する書証が一通り揃っていて、被告に「賃料を払わないから、出ていけ」と請求しています。
他方の被告は「所有権も賃借権も、方便として外形を整えるためにやったことで、現実には所有権は自分にある。元々借りたお金も返したし、利息分も十分払ったはずだから、これ以上お金を払う必要は無いはずだ」と反論します。
被告側の主張を読んだ後に、各書証を見ると、確かに通常の売買や賃貸借とは異なる不自然な部分がちらほら見受けられます。
そうすると、被告側の主張がもっともらしく見えてくるのですが、いかんせん「お互い合意の上だったじゃないか」という主張を裏付ける証拠が何もありません。
ちなみに、金銭訴訟は最終的に判決で白黒つける形を想定した事案のように思われましたが、今回の建物明渡は和解をテーマとしています。
時間割としても、半日かけて和解条項を擦り合わせるような構成になっていました。
結果
結果的には、今回は我がグループが圧勝したのですが、1グループとの前提の差も大きかったように感じました。
というのも、和解条項の作成に関して、我々2グループのチューターの先生と、1グループのチューターの先生の指導方針が大きく異なっていたからです。
チューターの指導方針の差
我々のグループのチューターの先生はどちらかというと放任主義で、あまりアドバイスめいたことは話さなかったです。
受講者が「値切られることを前提として、最終的な合意点よりも多目の額を最初に提示するのですよね?」と相談した時も「そうね、そうね。そういうこと」というような回答だったと記憶しています。
一方、1グループでは同様の想定から少な目の案を出そうとしたところ、チューターの先生から「最初から最終防衛ラインを示す」ように指導されたそうです。
ただでさえ、原告である2グループ有利な状況だったのですが、この和解条項作成の方針の違いで、流れが加速した面はあったと思います。
そういう意味では、この圧勝を喜んで良いのかどうか。
ちなみに、和解条項をどちらのスタンス(多目で提示するか、最初から最終案を出すか)で作成するかについては、資格者代理人の好みというか、信条による部分であり、正解があるものでは無いようです。
講師の弁護士の先生は、最初から最終案を出すということでしたし、それでダメなら蹴る、というスタンスだそうです。
確かに、腹の探り合いをするのが煩わしく、自分に自信があれば、そういうやり方もアリだと感じました。
そういう意味では、チューターの先生の指導方針が分かれた現実も理解はできるのですが、最初から最終案を出すことを統一的な方針とするのか、方針を受講生の判断に委ねるのか、指導方針が統一されているとすっきりするのにな、と思いました。
まぁ、模擬裁判の勝ち負けなんて、一喜一憂するものでもなく、そこで何を学ぶかが大事なんだ、と言われればそれまでなのですが。
でも、勝つにしても負けるにしても、すっきりしたかったです。
最終準備書面及び和解条項の講評
模擬裁判の終了後、弁護士の先生(金銭訴訟とは別の先生)の講評がありました。
ちなみに今回は裁判官役の受講生はおらず、弁護士の先生が裁判官役でした。
最終準備書面でなすべきこと
最終準備書面の役割は、裁判の最後に自分達の主張を整理して裁判官に伝えること。
最終準備書面では、これまでの尋問等全て踏まえた上で、証拠の評価や今までのまとめを主張する。
裁判官も、その裁判の膨大な記録を振り返っていちいち整理するのは大変なので、自分達の主張をコンパクトにまとめて伝える。
今回は、原告・被告とも、相手方への反論等に留まっていたが、立証、反証までして欲しいし、そもそも最終準備書面の目的がわかっていない、という話だと理解しました。
和解条項一般について
1.和解条項は難しい
あらゆることを考えて作らないといけないので、和解条項の作成は難しい。
日々、研鑽を続ける必要がある。
2.和解条項は誰が作るのが良いか?
原則として、自分(資格者代理人)が作るのが安心。
自分の依頼者の有利になることを最大限考えて作る。
裁判所に作ってもらうと手間はかからないが、細かいところまで口を出せないので不自由がある。
自分で納得のいくものを作るのが良い。
受講生が作った和解条項の不備
1.瑕疵担保責任(免除)
まず、瑕疵担保責任(免除)の条項を入れていませんでした。
今回のケースは中古住宅の売買という形になる上、現時点で被告が住んでいるという事情から、一般的な感覚で考えると瑕疵担保責任を追及されることは考えにくいです。
しかし、民法の原則から瑕疵担保責任を追及されたら、原告は困ってしまいます。
原告側代理人としては、瑕疵担保責任を免除する条項を入れていなかったのは、詰めが甘かったと言われても仕方ありません。
2.分割払い
次に、原告と被告は分割払いで支払うことに合意しましたが、その分割払いの不払があった時の条項が甘かったようです。
まず一括払いと比べて、分割払いでは途中で支払が滞るリスクが高くなります。
特に、今回は原告側が有利な和解をしたということは、被告は「価値の低い不動産に多額の支払いをする」ことになるわけです。
不動産の相場が下がったり、他に良い物件が見つかったりしたら、被告は分割金の支払がバカらしくなって払わなくなるかもしれません。
そういった原告のリスク回避について、あまりよく考えていませんでした。
原告側代理人として、少しでも多くの金額を回収できることが主目的だと思っていました。
金額的にかなり被告側は無理をしているから、一括では当然支払えないだろう、和解の互譲部分を考えても、分割には応じねばなるまい、と考えていましたが、そもそも分割払いに応じねばならない義務があるわけではありません。
そもそも分割払いに応じるのかどうか、応じる場合はリスクをカバーするためにどういう条項を入れるべきか、そういうことをもっと検討すべき、ということでした。
同期との交流
難しい話はここまでにして、大阪で知り合った同期とのお付き合いについて簡単に触れておきます。
もちろん、ここで触れない方々とも、たくさん知り合うことができました。
2グループ
毎日のように同じ教室で講義を受けたり、ディスカッションしたりするので、同じグループの面々については顔も名前も一致するようになります。
それぞれの性格、得意分野も、研修後期にはわかってくるでしょう。
他のグループもそうだろうと思いますが、年齢も経験も性格も様々なメンバーが揃ったヤミ鍋みたいなグループだったと思います。
2グループでは、飲み会好きの幹事がいたので、ちょこちょこグループ飲みを開催してくれて、メンバーのことも大阪のお店のこともわからないけれども、飲み会には参加したい私のような者にはとても有り難かったです。
ありがとうございました。
また、2グループの個々のメンバーとは、1対1で話ができる機会も比較的多かったように思います。
終電が終わった後、ホテルまでの道のりを案内するために一緒に歩いて帰ってくれたり、裁判所と職場が近いからということで昼食を一緒に食べて裁判傍聴に向かったり(ホテルと裁判所はそれぞれ別のメンバーです)。
二人とも、一見軽そうなキャラに見える面があるのですが、やっぱりこの試験に合格する人はどこか真面目な部分をちゃんと持ってるんだなぁ、と思いました。
グループ全体で一緒にいるときにはなかなか見えない一面でした。
ブロガー
元々ブログでの交流や中央研修でお会いしたことがあったホーム・タローさん、遊々さんと何度か飲みに行きました。
ブログ村でランキングを伸ばしている玉田さんとも、ブロガー飲みということで、少人数で飲みに行ったりしました。
そうそう、遊々さんの紹介でしゅんさんとも3人で昼食を食べたりもしました。
ブログを書いている司法書士同期は数えるほどしかいないので、せっかく会おうと思えば会える場所にいるのだから、ということで、仲良くなりやすいと思います。
ホーム・タローさんは、先輩から教えてもらったという美味しいお店をたくさん知っていて、毎回違うお店に連れて行ってもらいました。
ホーム・タローさんは元々のお友達も多いので、たくさん一緒に飲みに行くことはできませんでしたが、飄々とした中に自分の世界をしっかり持っている人で、人間的魅力溢れる人でした。
遊々さんとは、遊々さんのクラスメイトさん(中野さん)とその仲間達、という面子で結構な回数飲み会に行きました。
グループ飲み等の予定の無い夜は、ほとんど遊々さん、中野さん達と飲んでいたのではないでしょうか。
普段、教室等ではあまりしゃべらない遊々さんも、中野さんには結構しゃべるので、見ていて面白い二人です。
玉田さんは溢れるバイタリティーがすごいな、と思います。
外向型の典型、みたいな人です。
どこまで突き進んでいくのか、今後が楽しみです。
しゅんさんは、お仕事が忙しいらしく、飲み会には参加できないと言っていました。
話ができたのは遊々さんに紹介してもらった昼食の1回だけでしたが、ちゃんと気遣いができる人だなぁ、と思いました。
でも「ブログの文章が偉そうになってしまう」という悩みが面白かったです。
身体を壊さないように、がんばって欲しいです。
編集後記
特別研修も欠席や遅刻をすることなく無事に終えられたので、今度は認定考査の勉強に移らなくてはなりません。
なかなかエンジンがかからず、焦りも少しあります。
ぼちぼち軌道に乗せていかないといけませんね。
コメント
お疲れ様です。最終日にのんだ、熊さんや、ご結婚された方、チャンさん(個人情報の関係上暗号で)等々飲みたいメンバーがいる中で貴重な時間を頂き大変失礼しました。それだけが私の心残りな事です。本当に申し訳ありませんでした。後、兵庫は本日で研修は終了しました。会長より仲間いない人は私を頼りなさいと心強い言葉を頂きました笑笑笑。早速毎日イタ電(威力業務妨害で逮捕)しようと思います(大爆笑)数年に一度中国の方と交流できる事を願いつつ坂根さんのご活躍を期待しておりますd(^_^o)
>中野さん
兵庫の研修終わったのですね。お疲れ様でした。
最終日の飲み会については、人数がある程度居た方が楽しいですし、考え過ぎです。最後の最後に中野さん、遊々さんと過ごせて良かったです。
直接会える機会は、数年に一度かもしれませんが、今はLINE等もありますし、まさに「県外の絆」の様相を呈してきました。
引き続きそちらでも情報交換していけたらと思います。
中野さんの活躍が聞けるのは認定考査が終わってからになると思いますが、楽しみにしています。
PS.昨晩の夢で、認定考査の最中に寝てしまい、不合格になる夢をみました。恐ろしい。