[司法書士試験]記述で総合合格点まで巻き返した私の記述対策を紹介します。

万年筆 司法書士試験
photo credit: matsuyuki via photopin cc
万年筆

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平成25年12月20日に司法書士登録が無事済みました。平成25年合格の坂根(@sakane0958)です。
これでようやく司法書士と名乗れるようになりました。

私は択一の出来があまり良くなく、午前択一などは基準点ちょうどでした。
午後択一も良いとは言えない成績でしたので、記述の出来のおかげで受かったと言っても過言ではありません。

結果として「記述が得意」という評価をいただくことが多いのですが、私自身は、記述は択一のように実力が無ければ得点できない問題ではなく、運用の工夫、解き方の工夫で点が伸びる分野だと思っています。
その運用の工夫や解き方の工夫を余さずご紹介したいと思います。

まず点が取れない原因をはっきりさせよう

私の場合は、安定した点数が取れるようになるまで、下記のような障害があったと考えています。

  1. 絶対的な演習量不足
  2. 時間配分がマズい
  3. よくやるミスが存在する
  4. 枠ズレをやらかしてしまう

個別に解説と対策を論じてみます。

1.絶対的な演習量不足

そもそもひな型の暗記が曖昧だったり、1問解くのにものすごく時間がかかる場合、演習量が足りていないと考えられます。

対策としては、例えばLECの体系書式講座のような、一般的な論点を網羅している講座を一つ取って1周か2周回すと良いです。
よくあるひっかけパターンはたいてい網羅してあるし、論点も一通り揃っています。
私の受験初年度の経験では、体系書式講座を1周終えた直後の記述の点数は良い点数が取れていました。

記述の問題は1問解くにも結構な時間がかかるので、何周もぐるぐる回す必要は無く、1年に2周もやれば充分ではないかと思います。
それよりも、後述する繰り返し間違える部分の記録や、王道パターンの構築をしながら解くべきだと思います。
私の場合、最後の年は1周と2周目の途中まで進めたところで本試験、といったところでした。

2.時間配分がマズい

私の経験では、時間不足で記述問題を解かざるを得ない状況に陥ると、記述の点数ががくっと落ちます。
「何か書いて部分点だけでも稼がなくては」という思考になってしまうと、ひっかけ論点には気付けなくなり、目に付く端から何か書けることを書く、という状態になりがちです。

これに対する対策は、記述に十分な時間をかけること、つまり択一を短時間で解くことです。
択一対策が最大の記述対策になる、ということは姫野講師もおっしゃっています。

姫野司法書士試験研究所 お前は本当に記述式問題が苦手なのか?
最高の記述対策は時間をかけること。そのために択一の解答時間を短縮する。

また、同期合格のホーム・タローさんも、択一を短時間で解いて記述に注力した、という戦略で今年の合格を果たしています。

ベテラン司法書士浪人生 合格への道  (それから) 最終回 ベテランの受験生へ
”時間を使ってでも、しっかり記述を解く事を意識していました。そうすると、午後の択一は結構な高速で解く事になりますが、・・・”

自分のベストな時間配分を作り上げる

各科目にかけるベストな時間配分を答練や模試で試行錯誤しながら作り上げます。
私の最終的な時間配分はこのようになりました。

  時間(分) 時刻
民民保 18 13:18
供託書士 7 13:25
商登択一 15 13:40
不登択一
(全体45分)
~20問目
15 13:55
~25問目 10 14:05
~27問目 5 14:10
skipした問題 5 14:15
不登記述 45 15:00
商登記述
(全体55分)
前半役員変更以外の構成
10 15:10
前半役員変更の構成 5 15:15
前半役員変更以外の記入(登記できない事項含む) 7 15:22
前半役員変更記入 5 15:27
後半役員変更以外の構成 10 15:37
後半役員変更の構成 4 15:41
後半役員変更以外の記入 7 15:48
後半役員変更の記入 5 15:53
(商業登記記述の)チェック 2 15:55
(全体の)チェック 5 16:00

ボリュームがあって必要時間が長く、少しの気の緩みですぐに時間を浪費してしまう不登法択一や、商登法記述については、チェックポイントを細かく設けて引締めをはかっています。

ちなみに私の場合、この時間では択一の全部の肢を検討することはできず、確実な肢から答が絞れた場合にはどんどん確定して先に進んでいきました。
択一の正答率は落ちますが、そこは記述の出来とのバランスだと思います。

記述のそのものの高速化を検討する

そうそう劇的に早くはなりませんが、効率化を意識して工夫すれば多少の短縮はできると思います。
不登法、商登法、それぞれ下記の書籍を参考にすると、何かしら効率化のヒントが得られると思います。

↑ちなみに私は不登法の記述では答案構成用紙は使いませんでした。

↑商登法の記述では、逆に答案構成用紙で役員構成を整理しないとミスをすることが多かったです。
役員変更の内容がシンプルな場合は、小玉講師のやり方で充分なのですが。
役員変更以外の内容は、問題用紙の登記簿に矢印を引いて書き込み、答案構成用紙は使いませんでした(筆算に使うくらい)。

参考までに、問題冊子をスキャンしたPDFを下記に掲載しておきます(ファイルサイズが数MBあるので、ご注意下さい)。

平成25年午後試験問題用紙・択一第1問~第17問
平成25年午後試験問題用紙・択一第18問~第35問
平成25年午後試験問題用紙・記述

書く速さを追求する

読める程度の日本語を、できるだけ早く書く必要があります。
私は筆記具としてボールペンでなく万年筆を使うという工夫をしていました。

また、私は読んでいませんが、下記の書籍には、”「この程度の汚さなら減点されない」「この程度の汚さなら減点される」という見本”が掲載されているそうです(冬休みに行うべきこと – 司法書士超短期合格法研究ブログ)。

「汚くても良いから早く書けと言われても、どこまでなら許されるのか不安だ」と感じる方は参考になるかも知れません。
ちなみに、私の答案程度の字の汚さなら採点してもらえるようですので、私の答案も参考にしてください。

自分にとって最適な解答パターンを把握しておく

「自分はこういう流れで記述を解くと、ミス無く速く解ける」という王道パターンを整理しておくと、手順については迷わずに記述問題を解くことができます。
その王道パターンを記述問題を解く機会の直前に見返し、それをベースに記述問題を解きます。
現場での臨機応変な対応が必要な場合には、王道を外れる対応もする必要がありますが、王道パターンを持つことによって時間の遅れ具合も把握しやすくなりますし、ミスも少なくなると思います。

参考までに、私の商業登記記述の王道パターンを紹介しておきます。

1. まず登記簿を見て、公開会社か非公開会社か確定。
2. 頭から問題文を読んでいく
    1. 注意事項も最初に読んでから進む(気になるところは丸を付け、上部余白にメモしておく)
3. 役員変更以外の登記事項を確認し、登記できるかできないかを判断しながら書いていく
    1. 2回に分けて登記するパターンなら、登記申請日をひとまとまりとして検討。1件目と2件目の区切りに区切りの印をわかりやすく付ける。
    2. 株式数や資本金の変動は、登記簿の右側に矢印を引いて書いていく
    3. 登記の事由、登記すべき事項、添付書面まで書いてしまう
    4. 登録免許税は、役員変更も終わった後、最後に検討。
        1. 役員変更の登録免許税は基本が3万円。1億円以下なら1万円。判定基準時は、役員変更と資産総額変更の原因日付の先後。
        2. ちなみに、大会社は5億円以上。判定基準時は決算期。
    5. 仮に役員変更を続けて書いていく場合でも、いったん頭を切り換えて解くこと。
4. 添付書面(確実)
    1. 株主総会議事録(通数が確定できない時は、初見で思った通数を書いておく。違ったら訂正すれば良い)
    2. 取締役会議事録
    3. 委任状
    4. 定款(付けないのが例外と思え)
5. 添付書面(募集株式の発行)
    1. 申込みを証する書面
    2. 払い込みを証する書面
    3. 資本金の額の計上証明書
6. 添付書面(必要に応じて)
    1. 債権者保護手続き
    2. 総株主の同意書
    3. 割当を証する書面(譲渡制限有りの第三者割当のみ)
7. 役員変更の整理
    1. 登記簿の役員を書き出す
    2. 就任した役員を追加
    3. 縦のラインはペンで引く
        1. 横のラインを消した時にも消えないのでGood
    4. 就任、退任日を確定していく(会計監査人の重任注意)
        1. とりあえず長く線を引くのはNG。うっかり退任を忘れる原因となる。
    5. 完成したら、解答用紙の上から順に書いていく
8. 添付書面(役員変更)
    1. 就任承諾書の援用
    2. 別途提出の就任承諾書の確認
    3. 辞任届、死亡届(保佐開始の審判は欠格事由だが、補助開始はそうでないので注意)
    4. 印鑑証明書の通数
9. 全体的なチェック
    1. 上部余白にメモした内容で、抜かしているものは無いか確認
    2. 使わなかった聴取記録が無いか確認
        1. 原則、使わないものは無いはず。残っている情報があれば、何か見落としがあると思え
    3. 解答用紙だけでもざっとチェック(略字、誤字、空欄の確認)
    4. 株式数、資本金額、登録免許税額に計算ミスが無いか確認(時間があれば)

ちなみに不動産登記記述については、王道パターンは作成していません。
不動産登記の記述についてはそれほど課題を感じなかったからです。
反対に商業登記はボリュームが多く、時間切れになることが多かったため、効率化のための悪あがきをいろいろしていた、ということです。

3.よくやるミスが存在する

記述式では細かい失点の積み重ねで点を失うことがあります。
自分がよくやるミスは把握しておき、繰り返さないようにしましょう。

ミスを1箇所に記録する

客観的に振り返るために、紙のノートでも携帯のメモでもEvernoteでも良いですから、自分が使いやすいところにミスの記録を蓄積し、何度も繰り返してしまうミスは、回数も記録していくようにします。

答練、模試、本試験の直前によくやるミスを見返す

全てのミスを振り返ると大変ですので、ミスの中でも自分がよくやるミスをピックアップして、記述問題を解く機会の直前に見返すようにします。
直前に見返しておくと、自分がよくやるミスも結構気がつくようになります。

問題文を読んで気付いた時に、その場で簡易チェックリストを作っておく

問題文を読んだ時には気付いていたのに、解答用紙に記入する際に書き忘れた、というミスをしたことがありますか?
これをやるとなかなかに悔しいものです。
それを防ぐために、私は問題文の上部余白を「チェックリスト領域」として使っていました。
登記簿に「畑」と出てきたら、そのページの上部余白に「畑」なり「農地法の許可書」なり書いておきます。
問題を解き終わった後、ざっと問題文の上部余白を見返せば、ものの1,2分でうっかりミスをチェックできます

松本講師の「解答用紙に先頭の1文字を書いてしまう」というのも、忘れずに思い出すテクニックの一つです。
そのような「気付いた論点をきちんと解答に反映する」工夫が点数を積み上げるのに役に立ちます。

ちなみにチェックリストの活用は、司法書士になってからの実務においても有用だと感じています。
特に登記をメインの業務にする場合、平坦な申請に見える中に紛れ込んでくる要対応要素をいかに漏らさず見つけるか、という能力を磨く必要があります。

興味があれば、是非この書籍を読んでみて欲しいです。
1680円と少し高いのですが、それだけの価値は保証します。

忘れやすい登録免許税を直前に確認する

売買や募集株式の発行の登録免許税率は忘れることは無いと思いますが、マイナーな登録免許税の税率や条文番号は直前にさっと見ておくのがオススメです。
私はこんな風にまとめていました。

登録免許税(忘れやすいもの)

■商業登記法(BT下P339~)
株式会社設立 7/1000(最低15万)
持分会社設立 7/1000(最低6万)

新株予約権 9万

支店設置 6万
本店支店移転 3万

役員変更 3万(資本金が1億円以下なら1万)

支配人選任、代理権の消滅 3万円

解散 3万円

その他 3万円

・更正、抹消 それぞれ2万円

・支店の所在地における登記 原則9000円、更正変更6000円

・清算結了関係
清算人の登記 9000円
清算人の選任、変更等 6000円
変更等 6000円

■不動産登記法(BT下P167~)
・地上権、賃借権等
設定 10/1000
売買等による移転 10/1000
相続合併 2/1000

・抵当権等
移転(一般) 2/1000
移転(相続合併) 1/1000

工場抵当への抵当権設定 2.5/1000

・信託
所有権 4/1000
所有権以外 2/1000

信託にかかる所有権等の移転は非課税

・仮登記
所有権(売買等) 10/1000
所有権(相続合併) 2/1000
その他 本登記の税率の1/2
それ以外 1000円/個

・地役権設定 1500円/承役地の個数

・抵当権追加設定
登録免許税法第13条第2項 1500円/個

・仮登記の本登記(課税標準が不動産の価額)
本来の税率から、仮登記申請時に支払った税率を控除する
(登録免許税法第17条第1項)

・地上権者、賃借権者が所有権を取得
本来の税率に50/100を乗ずる
(登録免許税法第17条第4項)

(ちなみに、私のブレークスルーは古いので、ページ番号は最新のブレークスルーとは異なる可能性が高いです)

4.枠ズレをやらかしてしまう

実は枠ズレに繋がる論点は数が知れています。
名変の見落とし、表題部のみの建物の保存登記忘れ、遺贈の前の法定相続、それから名変を省略できるパターンの判断等が挙げられるでしょうか。

こういった枠ズレに繋がる論点のうち、特に自分がよく忘れる論点について、3.の対策と同様、直前に見返すことが有効です。
これを私は「書式の心得」と呼んでいましたが、ここに紹介します。

不動産登記法

1. 登記簿、別紙から目を通す
2. 登記の順番が変わってしまうミスに注意(名変の要否、表題部のみの建物、遺贈の前の法定相続等)
3. 枠に住所証明書や印鑑証明書が無い時は、解答用紙が配られた後すぐに、鉛筆で「住」「印」を書いておく
4. 関係者全員が委任していないケースは、登記識別情報の発行、「(申請人)」に注意
5. 買戻権、地上権等の余分なものは、論点が無い時は出てこないと思え
6. 答案だけでもざっとチェック(略字や空欄くらいはすぐ気付ける)

こうして振り返って見てみると、前述の王道パターンの簡易版みたいになっていますね。

商業登記法

1. 譲渡制限に関する規定
    1. 種類株式の1つでも公開株なら、公開会社。
2. 総会議事録の役員変更部分は、本文も読む。
    1. 定款の添付省略が可能な文言か、席上就任承諾しているか。
3. 募集株式の発行を登記できないと判断する時は慎重に
    1. 一大論点であり、細かいトラップも仕掛けやすい箇所だけに、安易に登記できない事項にはしない。そして、判例でも無効にされる例は限られているらしい( 平成25年度の記述式問題対策(16) – 姫野司法書士試験研究所)。
4. 支配人、会計監査人が出てきているのに、論点に絡まないはずは無い。何かの論点があるはずと思え。

これも振り返って見てみると、定款の話などは王道パターンと重複しているわけですが、それだけよく間違えていて、注意しようと思っていたということだと思います。

記述問題を解く機会の直前に、何をどんだけ確認してるのよ?

私の対策の中で、「記述問題を解く機会の直前に○○を見返すと良い」というパターンが多いですね。
ところどころで出てきたので整理すると、直前に確認する項目はこのようになります。

  1. 書式の心得
  2. 商業登記法の王道パターン
  3. 目標時刻
  4. 登録免許税(忘れやすいもの)

これらの項目をタスクリストに登録しておき、忘れないように確認していました。

余談ですが、これらにプラスして「携帯の電源を切る」というタスクもあります。
本試験で切り忘れることは無いと思いますが、答練や模試でうっかり切り忘れると周りの迷惑ですし、自分の集中力にも多大な影響があると思われます。

編集後記

最近の予備校では「択一でぶっちぎりの点数を取り、記述でアクシデントがあっても大丈夫なようにしよう」という戦略を勧めていますが、私は択一より記述の方が伸ばすのに時間がかからないと思っていますので、もったいないと感じます。
択一でぶっちぎりの点数を取るだけの勉強をする時間があれば、記述式の点数をある程度安定させる対策を取るのは容易なことだと思います。
また、記述の対策をしっかり取ってどんな申請書であれ臨機応変な対応ができることは、実務に入ってからも必ず役に立つスキルだと思います。

参考記事

[司法書士試験]【要約版】記述で総合合格点まで巻き返した私の記述対策を紹介します。

本記事が長過ぎると感じていたので、要約版の記事を書きました。
「長過ぎて、あまり内容が頭に残らなかったよ」という方はこちらに挑戦してみて下さい。

[司法書士試験]答案開示請求しました

私の択一及び記述の答案を掲載しています。
これくらいの汚い字なら採点してもらえる、という参考にもなると思います。
2013年12月29日、答案構成用紙を追加で掲載しました。

[司法書士試験]成績通知書が届きました

私の平成25年の本試験の成績表を掲載しています。
午前択一84(28問)、午後択一87(29問)、不登記述25.5、商登記述30.0の総合226.5でした。

[司法書士試験]記述の筆記用具:万年筆という選択肢

速く書ける、手が疲れないのが良いところだと思います。
デメリットだと思う部分についても触れています。

[司法書士試験]記述式のスピードアップに役立った書籍2選

今回の記事でも紹介した2冊を最初に紹介した時の記事です。
当時、スピードアップのためにやれることは何でも試してみる、というスタンスでした。

[司法書士試験]午後科目の時間配分

私の午後科目の時間配分を初めて紹介した時の記事です。
当時は今回の記事ほど細かく時間配分を紹介していませんでした。
合格したかどうか、わかっていなかった時期だったので、参考にする人もいるかどうかわからない、と思っていました。

[司法書士試験]本試験の時計管理

本番で試験官の時計に自分の時計を合わせる際の注意等を書いています。
バナナさんからG-SHOCKが良いとコメントをいただき、G-SHOCKを購入したりもしています。
バナナさん、これを読んでいたら是非コメント下さい。

[司法書士試験]「司法書士5ヶ月合格法」を読みました

私が松本講師を初めて知った頃の記事です。
斬新的な考え方をする人だなぁ、と思いました。
参考になるところを多々取り入れさせていただきました。

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コメント

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